ベルリン生まれのスペースドリンク
    ―90年代スクワットカルチャーで楽しまれてきたもの

 

 

‘89年にベルリンの壁が崩壊した時、乏しかった東側の共産主義体制の町に住んでいたたくさんの人々が、生活の自由選択と富を求めて西ドイツに移り住んでいったので、壁のあった場所に近いミッテ、クロイツベルグ地区には空き家になったビルがたくさんありました。まだ混乱が完全に片付いていない町の中、住居はもちろん、デパート、郵便局、保険所、工場、倉庫など、持ち主も現れずに、そのまま放置されていました。

その噂を聞きつけた国籍を問わないオルタナティブな若者達。当時、そこにいれば、西ドイツでは正常な男子の義務とされていた兵役を免れることができると、別の自由を求めて、93、4年頃から、自由な感覚を持つ若者達が次々と移り住んできました。彼らは、ちょうど世代的に70年代のベトナム戦争に対してアメリカで生まれた『ラブ&ピース』のヒッピームーブメントが、イギリス、オランダ、ドイツはハイデルベルグ付近辺りと、南フランス、イビザ、モロッコに流れていく過道中で、スモーキング文化を幼少時代から知っている世代でもあるようで、想像力も豊かに磨かれています。

彼らは空き家をスクワット(侵入)して、共同アパート、クラブやバーなどの遊び場、"自分ギャラリー"のような自己主張の場など、道のあちこちに捨ててある廃材を拾ってきては手を加えたりして、思い思いの空間を作り出しました。その出来(完成度)は、ピンからきりまであるものの、そこはまさしく『創造力の宝庫』。水道、電気工事をして正常に使えるようにするにも、上手いことできる人達が揃っていたもの。部品はだいたい捨てられている廃材や機材で、内装も捨てられているソファーや椅子、テープルなどの家具を改造して使いました。ほとんどの材料が壊れているため、完成させるのにも、ひと苦労。「この方法でだめなら他の方法を考えよう」という、その粘り強い、臨機応変さもまた、スクワットカルチャー独特なものなのでしょう。

『遊び場』の催し物は、バー、パーティー、コンサート、楽器持込セッション大会、Volks Kueche(国民みんなの台所)と呼ばれる安飯キッチン、自主制作映画の上映会、卓球大会、詩の朗読など、基本的には何でもありでやりたい放題。クラブの音はノージャンルで、さすがにテクノが多いけど、パンクやドラムンベース、ハウスやトランスなど。でも、スピーカーも壊れている時があるので、耳が痛くなることもしばしばあり・・・。あんまり質にはこだわらないで、その時の雰囲気や空間を楽しむ感じで、踊りたくなったら踊る、叫びたくなったら叫ぶ、眠たくなったら寝る・・・「本能に忠実な人達だなぁ」と、彼らの姿勢は本当にいつ見ても気持ちが良いもので、あまりにも好き好きに遊び心いっぱいの空間を作るのが上手いので、このカイワイの人達の先祖はやっぱり『森の小人』だったんだろう?と、私はふんでいます。

そんな遊び場に、しばしば登場していた
Spacebarというスペースドリンクというハーブ酒のバー。初登場したのは95年のこと、現在では都市開発のおかげでベルリンの表参道と化している『ハークシャーマーケット』の駅前にあった元幼稚園をスクワットしたバー(上記の赤い写真参照)で、毎週1回オープンしていたご様子。私がベルリンに着いたのは98年で、その年の冬はミッテにあるAcudというアートスペースの地下で毎週木曜日にスペースバーがオープンしていました。ED2000、Sven Dohse、Gianni Vittiello、Tsha`ba、Peer、Andre、Rolle、Krozome131、Eggmanなど 毎週違う地元のDJのノリの良い音、一晩にカクテルを1、2杯飲めば、時が経つのを忘れてしまい、ついつい朝になっていたという事も度々。アルコールも少し入っているけれど、なんといってもいつもと違った空間に導いてくれ、その上持続力もある植物のちからに感激。ふわふわして、他には例えられない感覚。お客さんもDJもクリエイティブで面白い人が多くて、時にはお腹を抱えて笑い転げてしまう瞬間もあり、踊りはまってしまう瞬間もあり、すっかりハマってしまって毎週通ってしまう事、約半年間。10種類+おすすめメニューを順番に試しているうちに、時が経つのは早かった・・・。

その後、2000年にドイツの首都がボンからベルリンに移り、町は一掃化計画が実施され、今まで無法放置だったビルがだんだん管理され始め、まだ弾丸の跡が残っている建物の壁やスクワットハウスが姿を消していき、町が新しくなっていく様子を見ていると、面白い事に不法地帯の中で生まれたものが新しく公的に飛び出していくという現象も度々起こっています。スペースドリンクもその一つで、「EUの商品規定が取れたから、これからはキオスクでも売れるんだよ!」という話が冗談なのかと思っていたら、某イタリア製のチョコクリームのドイツ販売にも一役かったという会社がスペースドリンクも扱ってくれるという話。さらに、新製品は今までの(製品の)あのガラナ特有な無機質な味とざらざら感のせいで、カクテルというより「植物」を飲んでるという感じがなくなり、味もパッケージも改良されて、おしゃれな箱の中にひっそりと納まって商品らしくなっていました。「これだったら日本にも胸を張って紹介できるかも?」と、思い立ったが吉日。日本の方々にも、この私の感動が届くといいなと想いを募らせています。

現在では、バーだけではなく、自然食品店、酒屋さん、雑貨店、フィットネス、大人系のお店にも登場し、愛好者は幅を広げているスペースドリンク。個人的には、アルコールの弱い私はハーブキックの"コックモック"と"ムーンウォーク"がお気に入りです。コンピューター仕事やパーティーの二日目三日目なんかで"疲れてきたけどもういっちょ!"という時に、軽めに30ml瓶の半分くらいを飲むと、2、3時間は持続性があり、その"もういっちょ"が叶うのです。例えば、旅先でぎりぎりまで買い物してて、出発までのパッキングに徹夜する時(あるでしょ?)とか、空港から自宅までの帰り道や、丸1日かかるバス旅行の後半戦、遊び疲れた後のキャンプの片付け、家の中の大掃除大会とか、軽い山登りハイキングとか。それから、アウトドアや運動、引越しなど、ガツガツ動きたい時に最適のアフリカ産のパワフルハーブ、コーラナッツの入っている"コックモック"がお勧めです。

「スペースドリンクは使い様」。"見えない物の力、自然の力"に気付いていただけたら本望です。それは、もしかしたら自分の中の"(本能という)自然"な部分かも知れません。そして、日本の皆様にも、より健康的に、そして今までとは違う、新しい驚きの"時"が訪れますように。また、ヨーロッパの訪れるパーティー好きの皆様へ、FUSION FESTIVALを始め、屋外パーティーに登場する
ドーム型のスペースバーでは、カクテルが楽しめるので、見つけたら是非お試しを。


Text: Kazue(ベルリン在住)